公開されているエネルギー危機(JKM高騰)

雑記ブログの更新が滞っております。やはりテーマをはっきりした方が書きやすいかな・・・。

というわけで久々のブログはエネルギー問題を扱ってみます。

数字で公開されているのに、その意味を分かっている人は少数だと思いますので、目に触れた方には損はないかと思います。

結論:「LNGスポット価格の現状」×「そこから計算される最低限のコスト」が跳ね上がっている

また、読者がどれだけいるか分からないので(笑)まったくユーザーフレンドリーには書きませんが、ご質問があればtwitterのDM頂ければ、詳しくお答えできるかと思います。

本職の方(エネルギー産業に従事されている方)には常識レベルだと思います。

ガス価格が高騰している

いきなり「語彙力」制限してますが、主要な化石燃料であるガス価格の市場価格がとても高くなっています。

https://www.cmegroup.com/markets/energy/natural-gas/lng-japan-korea-marker-platts-swap.html

こちらはCMEというアメリカの先物市場(シカゴ・マーカンタイル取引所)のサイトで、その中でガス価格(具体的には東アジア向けの液化天然ガス価格(JKM)、スポット取引を反映する)を表示しています。

※ガス価格は他にも、欧州ガス価格(TTF)、アメリカガス価格(HH)等があります。一口にガスと言っても、日本が輸入するのは液化して船で輸送するガスで、欧州やアメリカは気体のままパイプラインで輸送しています。

これ書いている現在(2022/8/13))、SEP 2022 に45.335、下に動かしてDEC 2023 に55.200と表示されています。

これは誰でも見れる数字ですが、ここに書いてあることの意味を下に解説します。

解説

LNG JAPAN/KOREA MARKER (PLATTS) FUTURES と書いていますが、これは、「日本韓国向け液化天然ガス(PLATTS社調べ)を対象とした先物価格」ということです。
上記の引用は、2022年9月向けは45.335 2023年12月向けは55.200です。

これが何を意味するか、ということもサイトを見れば書いてますが、1 mmbtu (エネルギーの単位)当たり、 45.335 米ドル ということです。

一つ補助線ですが、日本に入ってくるLNG船は、標準的な1隻で約6万トンで、これは約310万mmbtu そして4億キロワットアワー相当です。

これで計算してみましょう。9月に購入するLNGスポット価格は発電単価にするとどうなるか。

ドル円を134円として、

45.335 × 134円 × 310万 mmbtu  ≒ 188億円 (実際にはこれに多少の諸経費が加わるでしょう)

この船で4億kWhの発電ができるとして、1kWh当たり 47.08円

4人家族のモデルケースでは400kWh/月の電力使用量ですから、約18,800円/月

ただしこれ、「燃料原価」で見た時の話です。実際には、発電コストそのものに諸税・諸経費。そして発電ロス(発電所から送電するまでに失われる電力)、送配電ロス(電線や変電所を通る過程で失われる電力)があり、それだけで1割は必要。そして託送費用が10円程度(電気を家庭に届けるための必要)、つまり電気そのものの物理的なコストが跳ね上がっています。

2023年12月向けはここから更に高いということです。

もちろんこれに事業運営に必要な経費が加わってきますので、事業コストとしての電力単価はとんでもないことになりそうです。

当然ながら、燃料原価では取引はできません。タクシーを10km利用して、1リットル分のガソリン代だけで済むことはあり得ないように。

日本の電力はベストミックス(様々な電源を効率よく組み合わせる)でリスク分散を目指してきましたし、ガスの中でも原油価格リンクの長期契約の割合が多く、LNGスポット価格の高騰が直ちに電気料金に反映されるわけではありません。

でも、確実に、目に見える形で電力の事業コストが跳ね上がっていて、今の低廉な電気料金が持続可能であるはずもないでしょう。

今回の記事でお伝えしたかったことは、「LNGスポット価格の現状」×「そこから計算される最低限のコスト」でした。

読者の方は色々お調べになるかも知れませんが、エネルギー問題については「そんなに難しくないのに、なぜか事実でないことを声高に主張する」方も多いので、その点を踏まえ、楽観論に流されないようにしていただければと思います。

「●●があれば大丈夫」系の主張は全て嘘か勉強不足です(断言)。

 

 

 

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