放送中の大河ドラマ「青天を衝け」で、草彅剛演じる一橋慶喜が、小姓となった平岡に
「諍臣になってもらいたい」と言う場面がありました。
平岡は「諍臣は必ずその漸を諫む」と答えています。
私はこの言葉を知りませんでしたが、「諫める」とのことから、貞観政要の引用かな?と考えて、調べてみました。
【参考記事】
諍臣は必ずその漸を諫む
ー諍臣必諫其漸ー 貞観政要 卷二 論求諫 貞觀十七年
【貞観政要:じょうかんせいよう|十巻。唐の呉兢の著。
唐の太宗と重臣とが政治に関して論じたものを、四十門に分けて類編した書】
原文:
諍臣必諌其漸、
及其滿盈、無所復諫。
書き下し文:
諍臣は必ずその漸を諫む。
其の満盈に及びては、復た諌むる所無し。
当たりでした。
貞観政要は、中国の唐全盛期を築いた、唐太宗李世民とその家臣との対話集で、「守勢は創業より難し」(守ることは創ることより難しい)の出典としても知られます。
日本でも、徳川家康や北條政子といった、その後100年以上の治世を作り出した為政者たちが、愛読したということです。
疑問点と学び
「優れた家臣は諫める」というのは分かりますが、「漸」というのが分かりません。その後に続く文章も意味不明でしたが、調べてみると、こういうことのようです。
「漸」とは兆しのことで、事態が悪化してから諫めても、対処のしようがない
つまり、この言葉で重要なことは、「諫める」ことよりも、「事前に諫める」ことですね。
「察する能力」はビジネス・仕事においても非常に重要ですが、「気づかない」人にとっては、「結果として目に見えるまで理解できない」ということがよくあります。そんな人に、「このままだとこうなりますよ」と言うのは、機嫌を損ねる原因となり、勇気の要ることです。
また一方で、自分が「気づかない人」の側であることもあるでしょう。自分のための諫言を遠ざけてしまうことは、上司等の立場でなくても、ありそうなことです。
「諫言」のようで自己保身であることも・・・
非常に小さなリスクを大きいことのように言ったり、「私は言ったのに対処しなかったのはあなた」という責任逃れをするために、諫言のような発言がされることはあるでしょう。
極端な例としては
とかですね。
そして、実際にそういうことになると、「だからあの時、忠告したのに!」と言われてしまうわけです。
これは、「全財産を特定銘柄に突っ込んで、その企業が破産した場合」にはありえますが、
- 「生活防衛資金を確保してリスク許容度の範囲内で投資する」
- 「投資先を分散する」
等、対策を取れば、全財産を失うことはありませんし、適切な運用によってリターンを得ることもできます。
「気付き」は重要
言う方も言われる方も、「気付きは重要」ぐらいに思っておくのがまず丁度良いのではないかと思います。
ただ、優れた諫言であれば、「気付き」だけでなく、「対処」も含まれているはず、とも思います。
また、故事にある通り、事が起こって対処のしようが無くなってからあれこれ言うのも、あまり意味のあることではありません。
言う立場であっても、言われる立場であっても、上記の視点は意識したいものです。