電力と国防

  • 2021年5月23日
  • 2021年5月22日
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電力システムに市場メカニズムが導入・拡大されて久しいです。
そして、安定供給は度々危機に瀕し、消費者が安い電気にアクセスできるよりも、再エネの導入が優先されています。
電力自由化で電力会社を変えたら安くなった!と喜んでいる人も、漏れなく「再エネ賦課金」を負担しています。
まぁ、それでも経済性についてだけなら、「国民が再エネ普及を選択したから」、という整理も可能でしょう。
ただ、最終的な安定供給やエネルギーセキュリティに関わる部分は、”国防”と同様、国全体の問題として議論しないといけません。
国防と同様というのは、国に住む人全員に関係があって、そこに落ち度があってはならない(生命と安全に関わる)という意味です。
もし国防の世界で、「再生可能弾薬を配備しましょう。高コストで制御は効かないけれど、そこは従来弾薬で補いましょう」という議論が、経済学者や消費者の主導で行われたらどうでしょうか?
  • そこは目的(国防)優先にしろよ。
  • あえて高コストにする必要ないだろ。
  • 学者や消費者じゃなくて、軍事の専門家に議論させろよ。
このような批判は当然起こるでしょう。でも日本の電力システム改革は、それに近いことをやってしまっているんですね。
  1. 2011年の東日本大震災で東京電力が原子力災害を引き起こしたことから、電力会社の発言力・政治力が低下した(専門家の排除)
  2. 安価に発電できる既存原子力発電所の再稼働を、政治・規制・司法等の点から阻害し、東京電力や、被災電力である東北電力を含む、ほぼ全国の電力会社が料金値上げの止むなきに至った(経済性の劣後)
  3. 2021年初頭の電力危機を始め、度々電力危機に陥っている(最優先であるべき安定供給の後回し)
③については「まだ検証が終わっていない」とか「再エネのせいじゃない」とかいう人もいるでしょうけど、
  • これまでの電力システム改革で「非対称規制」が行われて、「固定費に対するケアが全くされなかった」結果、「旧式の発電設備が急速に休廃止している」ことや、
  • 新電力の一部が、本来は最終調整であるべきスポット市場での調達に依存した結果、燃料調達へのインセンティブが働かない状態になったことは、
事実です。
例えば、石油火力を一般送配電事業者に維持管理させ、その費用を託送費に上乗せするとかができれば、安定供給の確保はかなり容易だったはずです。
石油火力は発電コストが高いので休廃止が進んでいますが、低稼働ということは追加kWを供給できるということであり、タンクに貯蔵でき燃料を国内の製油所・石油基地から輸送できるので、海外調達に依存する石炭・LNGに比べ燃料消費量の変動に柔軟に対応できる、いわばΔkWhを供給できます。
そういう議論があったかどうかは定かではないですが、仮にあったとしても、「託送費への上乗せ=新電力負担増」ということで、却下されたことでしょう。そして、今から仮に議論したとしても、休廃止は進んでいるので、もう手遅れです。
これ、国防に話を戻すと、旧式の武器・武装をどんどん廃止した後、周辺事態が悪化し、急に武器が必要になっても、特に大型兵器が急には作れない。という感じですかね。
旧式の武器が役に立たないかというと、「ハイ&ローミックス」といって、援護や、火力(攻撃力)の底上げをすることができますので、無駄にはなりません。
終わりに
多くの人にとって、電力自由化とは、電力システム改革における小売の全面自由化を指すと思います。そして、その結果何故電気代が安くなるかと言えば、新規参入した新電力が高効率の発電所を作っているからではなくて、既存の電力会社が負担している固定費を負担しない形で電気を調達・販売しているからです。そして、固定費が負担されなくなった結果、設備は縮小し、災害等に脆弱な電力システムになりつつあります。
これを国防に例えると、財政が厳しいからと国防予算を削った結果、例えば旧式の艦艇や戦闘機が維持できなくなり、その結果、外国が周辺領域で活発な活動を始めたようなものです。一旦、その時が来ると、取り返しがつきません。
電力と国防の最終保障は通ずるものがあると思います。その点でもご意見がありましたら、コメントなり、TwitterでのDMを頂けると嬉しいです。
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